2月5日・6日、会派による行政視察を行いましたので報告いたします。
今回は初日に経済産業省及び国土交通省の担当者に室蘭市の課題に関係する国の施策等について、2日目には板橋区のシティプロモーションについて伺ってきました。
1 経済産業省
(1)水素基本戦略について~資源エネルギー庁
国では、水素基本戦略として2050年を視野に入れたビジョン+2030年までの行動計画を策定した。
水素基本戦略の概要としては、日本が抱えるエネルギー需要をめぐる構造的課題として、日本の一次エネルギーの90%以上を海外化石燃料に依存していること、2030年度に2013年度比26%減を目標、長期的には2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことがあり、水素は、日本のエネルギー供給構造を変革・多様化させ、大幅な低炭素社会を実現するポテンシャルを有する手段である。
水素利用を促進するためには、水素の低コスト化を実現することが重要であり、そのためには供給と利用の両面での取り組みが必要である。
供給側の取り組みとしては、安価な原料(海外褐炭(石炭の1/10以下)、海外再エネ(国内の1/10程度)で水素を大量製造すること、大量に製造・輸送するためのサプライチェーンの構築すること、利用側の取組としては、FCV・FCバス・水素ステーションの普及を加速すること、水素発電(神戸で世界初の水素発電所が実証実験)の商用化に向けた実証・技術開発を推進することなどが挙げられる。
平成30年度では、現在から重点的に実施する定置用燃料電池の普及拡大(エネファーム等導入支援事業費補助金)に76.5億円、燃料電池自動車の普及促進に(水素ステーション整備費補助金)56億円、2020年代後半に実現する海外未利用エネルギー由来水素供給システムや2040年頃の実現に向けたCO2フリー水素供給システム確立に向けた水素サプライチェーンの構築実証事業89.3億円、また、地域の特性を生かした地産地消型エネルギーシステムの構築支援事業費補助金(70億円の内数)なども水素・燃料電池関連として予算化され、国として積極的に水素社会構築に向けさらに動き出していることが伺えた。
本市としては、FCV、移動式水素ステーションを導入し市民や企業に対して普及啓発やFCVの災害時の電力供給などを進めてきているが、今後さらなる水素社会構築に向けた室蘭ならではの地産地消エネルギーシステムの構築を考える必要があると感じた。
(2)航空機産業の概要と支援策について~製造産業局
民間航空機市場は、年率約5%で成長する見込まれる成長市場であり、航空機産業全体では、国内生産額は、過去5年で1.1兆円から1.8兆円に増加しており、2030年には3兆円を超えると期待されている産業である。
現状は、機体構造については、ボーイング社のプロジェクトに参加が主体、エンジンでは、小型機向けでは日本企業が米国やドイツ企業とともに合弁会社を設立、中大型機向けでは英国や米国企業とのパートナーシップを実施している一方、装備品やエアバス社の機体については、国際プロジェクトへの参加は限定的となっている。
航空機部品事業は、ほかの業種と比較すると長期的に安定した事業ではあるが、他方で、初期投資(設備投資)が大きく、実際に売り上げが計上されるまでのリードタイムが長い。また、高い生産管理能力や民商取得が求められ、20年を超える長期の供給責任も負うこととなる事業であり、近年の量産化、コスト削減要求により、これまでの鄲工程の受注から、複数工程を一括して受注・管理する体制が求められている。
現在全国各地には、複数工程を一括して受注・生産しているものから勉強会まで、様々な段階のグループ(クラスター)が存在していることから、「全国航空機クラスター・ネットワーク」を構築することで、全国の各クラスターの連携を強化し、海外メーカーや国内下川企業等への統一窓口の設置や現在出来上がっているクラスターの枠を超えたクラスター間連携による一貫生産体制の構築の実現を目指している。
国の航空機部品産業支援としては、上記のクラスター支援のほか、現在海外で行っている特殊(非破壊)検査技術者の育成や装備品の特殊試験設備の整備等の人材育成・環境インフラ整備や国際展開支援等のサプライチェーン強化、参入支援として、ビジネスマッチングやJISQ9100(航空機産業向け品櫃マネジメント規格)やNadcap(国際航空宇宙産業における特殊工程や製品に対する国際的な認証制度)などの国際認証取得の支援などを行っている。
本市においても、今年度室蘭市地域基本計画を策定し、航空機産業などの成長分野への中小企業参入促進を図るとしており、来年度に認証取得支援補助金など航空機産業参入支援事業としてパッケージとして予算計上している。
複数の企業が航空機産業への参入を目指しており、ものづくりのまちとしてしっかりと市としても応援すべきものと考える。
2 国土交通省(港湾政策について)
(1)クルーズ船誘致について~港湾局
2017年の訪日クルーズ客数は253.3万人、我が国港湾への寄港回数は2,765回となり、いずれも過去最高を記録。また、2017年にクルーズ船が寄港した港湾の数は、全国で131港であるが、そのうち大型クルーズ船(10万総トン数以上)が寄港した港湾は28港であり、室蘭もそのひとつ。
国は、訪日外国人旅行者数の受け入れ目標として2020年に4,000万人(訪日クルーズ旅客は500万人)、2030年に6,000万人を目指すこととしており、クルーズ船に関しては、北東アジア海域をカリブ海のような世界的クルーズ市場に成長させ、クルーズ船寄港を生かした地方創生を図るとしている。
現状と課題としては、増大するアジアのクルーズ需要を取り込み、クルーズ船の機構が地域経済に与える効果を拡大すること、クルーズ船が寄港するための港湾施設やクルーズ船の機構に伴い発生する諸課題への対応が不足していること、寄港地が西日本の一部の港に集中する傾向がることなどが挙げられており、対策として、クルーズ船「お断りゼロ」の実現のためクルーズ船の受け入れ環境の緊急整備やクルーズ船寄港地マッチングサービスの提供、国際クルーズ拠点として国が指定した港湾において、民間による受け入れ施設整備を促す協定制度の創設、全国クルーズ活性化会議(本市も会員)と連携し、寄港地全国展開に向けたプロモーションなどの取り組みを進めているとのことであった。
(2)フェリー政策について~海事局
国は、訪日外国人旅行者の入国から目的地までの移動に係る受け入れ環境を支援するため、平成28年度より、訪日外国人旅行者受け入れ環境整備緊急対策事業により、無料公衆無線LAN環境の整備、案内標識、可変式情報表示装置、ホームページの多言語化、船内座席の個室寝台化等を支援しており、平成30年度当初予算において、新たに、無線Wi-Fiの導入、船内・旅客ターミナルにおけるトイレの様式化、タブレット導入を追加したとのこと。現在、宮蘭航路で就航予定の川崎近海汽船㈱「シルバークイーン」において、Wi-Fiやトイレの様式化の整備を検討しているようであり、国交省としても補助制度についての説明をしているとのことであった。
また、貨物トラックの運転手不足等に伴い、海上輸送の利用の重要性が高まっており、陸上貨物の取り込みを進めるため、荷主が海上貨物を利用しやすい環境を整備る必要がありことから、フェリー、RORO船等の船社共通で運行ダイヤ・空きスペース等の利用情報をわかりやすく提供する、モーダルシフト船の運行情報等一括情報検索システムの構築を進めており、平成29・30年度の実証実験を経て平成31年度以降システムの本格運用を予定しているとのことであった。
(3)港湾計画について~総合政策局
港湾計画については、変更のフローについての説明を受けた。まず、港湾管理者による長期構想(20~30年)の検討するため長期構想検討委員会を立ち上げ、1~2年程度で改定の目的、長期ビジョン(フェリー航路や貨物、クルーズ船等)、新たな港湾の使い道を示し、地方港湾案審議会に諮問、答申を受け港湾計画を策定、国土交通省へ提出。
国土交通省では、港湾の開発、地用及び保全慣れ浴びに開発保全航路に関する基本方針の適合について審査、また、交通政策審議会港湾分科会に諮問、答申を受けたうえで、港湾計画の変更を求めない旨の通知を港湾管理者に行い、港湾計画の概要の公示となる。
室蘭港については、長期構想健康委員会を早期に立ち上げる段階だと聞いている。ぜひ、長期的なビジョンを示してほしい、とのことであった。
(4)北極海航路について~総合政策局
北極海航路は、欧州と東アジア間において、スエズ運河経由と比較して高校距離を約6割に短縮できことなどから、欧州と東アジアを無鈴新たな選択肢として国内外から関心が高まっている。
一方、利活用にあたり情報が少ない状態にあるため、利用動向や自技術的課題等に関する情報収集を行うとともに、「北極海航路に係る官民連携協議会」等を活用して民間事業者・関係省庁に情報共有を図っている段階とのこと。課題として、砕氷船造船のための技術、コストや需要などが挙げられていた。
なお、商船三井がロシア・ヤマルLNGプロジェクト向け新造LNG船3隻の造船契約を締結し、昨年12月に竣工した第1船は、砕氷航行試験を経て、2018年3月末より同プロジェクトへ投入される予定とのこと。
港湾政策については、本市も6月には宮古~室蘭港間のフェリー航路就航、また、毎年ポートセールスを行いながらクルーズ船の誘致にも力を入れている。また、現在港湾計画の改定に向けた作業を進めているところであり、この度の国の施策を伺ったことは大変参考になった。
クルーズ船の誘致については、西日本を中心に中国からのクルーズ旅客数の伸びが著しく、今後のその傾向が続くと思われるため、室蘭への誘致については、洞爺・登別等の西胆振の観光地を含めた北海道観光の玄関としての室蘭港のPRをさらに進めるべきと感じた。また、JAPIC(国土・未来プロジェクト研究会)による提言でされた祝津ふ頭の客船バース化は、現状では厳しい状況であるが、室蘭にとって非常に魅力的ではあることから、港湾計画の一部変変更も視野に先行して検討すべきと感じた。
国としても、訪日外国人旅行者受け入れ環境整備緊急対策事業、モーダルシフト船の運行情報等一括情報検索システムの構築を進めるなど、同じ重さの貨物を運ぶ際に排出するCO2量がトラックの1/6以下と環境にやさしい輸送機関であるなど、海運へのモーダルシフトの更なる推進が必要としていることから、本市としても、宮蘭航路の着実な運航のため、航路のPR、集荷、観光の推進、宮古市との交流などさらに進めていかなければならないと感じた。
3 板橋区~シティプロモーションについて
板橋区では、少子高齢化・人口減少社会が本格的に到来することから、区政の持続的な発展を目指して、生産年齢人口の増加や定住化の促進が不可欠であることから、区が持つ潜在的な魅力を引き出し、未来に向かって輝き続ける都市“いたばし”を区と区民が一体となって創造・発信していくことが求められてきたことから、平成27年3月に板橋区シティプロモーション戦略を策定した。
シティプロモーションでは、情報発信手法の強化が必要。現状においては、情報発信に戦略的なバックグラウンドが無いため、情報の「見える化」、「魅せる化」、「デザイン化」へと進化させ、常に区民や企業など地域の各主体を意識し、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、魅力発信を展開していく必要があることであった。
シティプロモーション戦略では、区民意識調査において区に対する愛着・誇りが50歳以上と比較して低い年代であること、結婚後、定住する可能性が高まる年代であること、女性の方が区内生活時間が相対的に長く、区のサービスによるメリットを享受しやすいことなどから、30歳から44歳の女性をターゲット層としていた。
板橋区のブランディングを成功に導くためには、「板橋区の目指すべき姿」を整理し、シティプロモーションに活用していくことが重要であり、戦略ターゲットを念頭に設定された「心豊かに」「親子で楽しく」「安心で快適に」という3つのコア価値のもと、それぞれ3つの特徴、さらにそれぞれの特徴を支える3つのバックグラウンドを示し、全てを総称して、「暮らしやすいが叶うまち」というスローガンを定め、スローガンと区の魅力のPRを有機的に連動させることで、「板橋区の目指すべき姿」を効果的に浸透させていくことを目標としていた。
「板橋区の目指すべき姿」についても、従来のように情報をオープンにするだけでなく、その情報を全庁的な推進体制のもと、届けたい人に向けて魅力的に発信する必要があるため、「3つの基本方針」が定められており、基本方針1、区の魅力発信を継続的および統一的に実践するための体制・プロセス(過程)・メソッド(体系)をつくり、基本方針2、板橋区民のロイヤルティ(誇り・愛着)アップを優先させ、徐々に周辺エリアへ魅力発信を拡大し、基本方針3、①関係をつくる広報 ②事実を魅力的に伝える広報 ③区政を動かし区を変える広報の順で魅力発信をグレードアップさせることに取り組んでいた。
職員の発信力向上を図るため各所管課において、個別に企画・運営されている広報活動や情報発信活動を、いたばし魅力発信担当課および広聴広報課を中心とした会議体により、統合的に管理していくことをすすめられていた。
本市においては、板橋区よりも少子高齢化、人口減少が進んでいる中、生産年齢人口の増加や定住促進を図るため、本市の魅力を再発見し室蘭市民に室蘭市への誇りや愛着アップを優先させることが重要であり、広報誌のあり方、情報発信のあり方を再検証し、そのうえで外向けへのシティプロモーションへと結びつける施策が必要と感じた視察であった。
11月13日から16日まで会派による先進都市行政視察を行いましたので報告いたします。
1 香川県東かがわ市
(1)5歳児検診の取り組みについて
東かがわ市では、平成17年4月1日に、「発達障害支援法」が施行された同年、モデル事業として5歳児健診を実施し、翌、平成18年度より通年事業として実施されていました。
背景としては、これまで、母子保健法や学校保健法に基づいて、1歳半健診や3歳児健診、就学前健康診断は行っていましたが、3歳児健診以降、就学前健診までに発達を診る公的な健診がないことや、脳の前頭葉機能が発達するのは4、5歳頃であり、これまでの健診だけでは、発達障害を判断することは困難であったため、「5歳児健診」を実施することにより、広汎性発達障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの早期発見に向けた、健診の必要性の声が高まったことにあります。
また、5歳児健診は、発達障害を発見することだけが目的ではなく、子育てに関する悩みや相談事など、保護者の育児に対する不安解消、さらには、以降の集団生活を円滑に進めていくためのひとつの手段として、乳幼児期から青少年期までの一貫した子育て支援を考える中で最も効果のある健診のひとつと考え、5歳児健診を子育て支援の一貫として位置づけされていました。
実施に当たっては、先ず、年度初めに合同園長所長会において、実施の協力を依頼し、その後、医師、療育センター、保健課、子育て支援課、学校教育課が集まり、前年度実施の結果等を踏まえ、実施に向けた協議を行うなど、健診実施前から、各施設や関係者等との連携を確認することで、スムーズな実施が可能となっていました。
検診後のフォローとして、相談支援専門員、作業療法士、保健師、幼・保・こども園の施設長・担任が、検診3~4ヶ月後に、幼児が所属する幼稚園などにおいて、事後観察を実施し、その後の状況等を確認するとともに、誰がどのように保護者にアプローチするかなど、効果的なアプローチ方法や今後の支援方法について、具体的な検討が行われ、実際、保護者に健診後の様子を聞き取る際には、不安を与えないよう、聞き方を工夫するなどアプローチの方法については、十分な配慮が重要とのことでありました。
また、東かがわ市では、健診の目的や発達障害への理解と知識の向上を図るため、平成17年度より毎年「発達フォーラム」を実施しており、積極的な啓発を行うことで、事業開始以前に比べ、市全体での発達障害への理解が進み、健診自体もスムーズに実施されており、現在、5歳児健診受診率はほぼ100%を達成しており、継続することの大切さを強調されていました。
課題については、就学の段階で就学指導委員会へ繋げてはいるものの、就学後は教育部が担当となり、その後、個別の把握が困難であるとのことでありました。
本市では、まだ5歳児健診は実施されておらず、発達障害の早期発見、早期支援に向け早急に取り組むべきと考えます。
2 徳島市
(1)健康づくり大作戦ポイント制度
この事業は、市民一人一人の健康づくりへの関心を高め、自主的な取り組みを支援することで、生活習慣病を予防し、健康寿命を延ばすことを目的として行われた事業であるが、国の地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)が不採択となったこと、利用者が少なかったことなどにより平成27年度の単年度事業となったものでありました。
事業内容は、市民が健康づくりのために実行した取り組みをポイント化して、1,000ポイントを1,000円分の商品券に交換できるもので、20歳以上の徳島市民1,000人を対象としていたものの、実際には、申込者数767人、ポイントを商品券に交換した市民は295人(38.5%)の実績であり、予算額209万円に対して729,050円(一般財源)の決算となっていました。
現在は、健康手帳を特定健診等の健診時に手渡しして健康づくりに役立てているとのことでありました。
健康づくりに関する事業においては、様々な市においてポイント事業を行っていますが、その財源とともに効果をしっかりと検証する必要があります。徳島市の場合は、交付金が採択されなかったことにより単年度事業となりましたが、周知期間、申込期間、財源などの課題があったことから、本市においても、高齢化が進む中、市民の健康づくりについての取り組みが必要ではありますが、財源を担保したうえでしっかりと制度設計を行い実施することが望ましい事業であると思われました。
(2)徳島市民病院の経営について
徳島市民病院は、昭和3年に内科のみの市立実費診療所として開設、昭和24年に徳島市民病院と改称、2010年に新築され屋上にヘリポートを有する11階建てとなっています。病床数は339床(一般病床295床、回復期リハ病床40床、人間ドック4床)、医師数74名(内初期研修医6名)で全職員数は572名。「脊椎・人工関節センター」、「地域周産期母子医療センター」を設置のほか、がん患者のトータルケアを目指して2015年4月に「がんセンター」を開設し、同時に緩和病床を5床も設置。2016年4月からは、24床の緩和ケア病棟として運用されています。
緩和ケア病棟開設に要した経費は、備品購入費6,849千円、医療機器購入費1,676千円、病棟修繕費として19,335千円の総額27,860千円。総費用の1/3(9,286千円)は、徳島県医療介護総合確保基金より拠出されています。収入は、病床利用率44.4%、1日平均10.7人で、月額16,070円の収益を上げています。平成29年4月から腫瘍精神科医師を採用し、緩和ケアを担当する常勤の医師1名以上の配置という緩和ケア病棟入院料の施設基準をクリアされました。
現病院事業管理者は、1973年に徳島大学医学部卒、2002年徳島大学医学部長、2011年徳島大学名誉教授を歴任、2014年から現職となっており、がん医療については、米国MDアンダーソンがんセンターへの留学経験のほか、日本臨床腫瘍研究会(現日本臨床腫瘍学会)会長なども歴任しており、医師確保については事業管理者の力によるところが大きいとのことでありました。また、徳島大学各診療科との人事交流を活発化するとともに、平成27年8月から臨床教育センターを設置し、質の高い臨床研修教育を実施するための体制も構築していていました。
平成28年度決算における病院事業総収益は、10,192,772千円、総費用10,144,530千円、純利益は48,252千円。平成26年度からは黒字となっており、一般会計からの繰入は、基準による繰入約17億円。患者数は、入院94,381人、外来103,293人の合計197,674人となっています。
市立病院の経営については、まず、医師の確保が最重要課題となっている現在、徳島市民病院においては事業管理者の出身である徳島大学からの派遣が行われており、担当者からは、外科系の医師は確保できているが、内科系の医師確保が課題であるとの話もあった。また、がんセンターや緩和ケア病棟の開設なども管理者の方針によるものであるとのことでありました。
本市立病院においては、医師確保が進んでおらず、今後も地域医療構想の中で本市立病院の役割や病床数が検討されることとなっていますが、市民にとって市立病院として何が必要か、医師確保をどうするか、病院事業管理者の役割の大きさを改めて感じた視察でありました。
3 三好市
(1)サテライトオフィス誘致プロジェクトについて
三好市では、人口減少と少子化の影響で、学校数の減少や経済の縮小が課題点として挙げられていた中、循環型(都市部の従業員が2~3ヶ月、地方の事業所にて勤務。リフレッシュの要素が強い)から地元雇用型のサテライトオフィス誘致に転換していました。
理由としては、都市部であってもIT企業などは、大企業に埋もれ人材確保に苦労していたところ、地方に立地することによりニュースとなり人材が集まる、また、地元雇用となることから地域住民と密接な関係が築くことができるなど、様々な好影響があることが挙げられていました。
実際に誘致活動で実際に進出を検討する企業が物件を探していたところ、市内中心部にある、廃業した歴史ある旅館のオーナーが、安価での提供を了承し、初めてのオフィスが開設され、時を同じくして、三好市の地域おこし協力隊が古民家を改装し、「スペースきせる」を開設し、さらにNPO法人「マチトソラ」も設立されるなど、地域挙げての受け入れ態勢も整いました。その結果、現在では6社が進出し、24人の地元雇用を生んでいました。
三好市としては、様々な企業誘致のための支援策を講じていますが、この事業は、行政がきっかけを作ってはいるものの、実際には民間の力が大きく働き、良い意味での連携が取れていると感じました。
本市も含め、行政が企業誘致へ向け金銭面も含めた様々なメニューを用意しても、企業側が求めているニーズとは乖離する場合が多いのが実態で、必ずしも企業誘致には繋がっていない現状があります。
しかし、三好市の場合、サテライトオフィスを誘致する前提で、市内のブロードバンド環境を整備し、オフィス物件として休廃校した学校や、民間施設も視野に事業を進め、廃業した旅館や学校の活用にも繋がっていいます。
しかも、ターゲット先は、都心部で営業を行い、人材確保に苦慮しているベンチャー企業などで、三好市にいながら地元人材の活用で、都心部の仕事が進められることをセールスポイントとして売り込んで成功していますし、地元ケーブルテレビ局が制作した、「仕事はデジタル、暮らしはアナログ」のキャッチフレーズとPRビデオなど、地域挙げての受け入れ態勢は特筆すべきもので、進出企業の経営者の繋がりや、口コミ情報で新たな企業も進出しており、北海道の企業が廃校になった小学校の体育館を倉庫として活用し、スポーツ用品の物流基地として営業活動を行っていることも参考になる事例でありました。
本市においても、モノづくりに関連した企業ばかりではなく、IT関連も含め、広い範囲での企業誘致を進めながら、将来性のある企業の育成や、人材に対する先行投資も真剣に考えるべきであると感じた視察でした。