令和4年度 会派視察報告 小松市NO1 7/13

 小松市では、中学生の給食費無償化と公民連携デスクについて伺いました。

 小松市の令和4年4月1日現在の人口は106,544人、うち小学生5,650人、中学生2,894人の合計8,544人であり、給食費の無償化は、昨年度が中学3年生(義務教育学校9年生)の2学期以降分で予算額4,200万円、今年度は市内在住の中学生(義務教育学校は7~9年生)で予算額は1億8,800万円となっています。

 給食費無償化は、昨年3月執行の市長選挙において新たに当選した宮橋市長の公約の中の「子育て・教育」の中で「学校給食の無償化」を掲げており、低所得者への経済的支援とともに子育て世帯に小松市を選択してもらうための好循環を作り出す子育て支援が目的。

 しかし、無償化に至るまでには紆余曲折があり、市長当選直後の6月議会に給食費無償化分(4,200万円)を含めた補正予算を上程するも、議会からは無償化分を減額した修正案が提出され可決された。ようするに給食費の無償化案は否決されたことになりましたが、市長は地方自治法第176条第1項に基づき再議(※1)。6月議会の議決が否決され、修正前の給食費の無償化を含めた予算案が可決されるという経緯があったということでした。

 議会が給食費無償化案を修正した背景には、完全無償化の財源が不透明であることなどが挙げられましたが、宮橋市長の「完全無償化を念頭に置くが、次年度以降の健全無償化を前提とするものではない。」との答弁により、議会側も「次年度以降の完全無償化を前提としないこと」などの付帯決議の議決も加えて議決とのことでした。

 その後は事務事業の見直し等を積極的に行い、継続的な財源の確保策等を議会に示したうえで中学校すべての生徒の給食費無償化とした1億8,800万円を含めた令和4年度予算案は原案どおり可決されたということでした。

 市民からは特に反対の声はなく、給食費無償化に賛同した市民や企業から1,200万円の寄付の申し出もあるとのことでした。

 今後は、市全体で事務事業の見直しによる歳出削減や企業誘致などの税収増加に取り組むことによる継続的な財源確保に努め、段階的に無償化の拡大を検討しているということでした。

 給食費の無償化という課題は、子育て施策として地方自治体にとって大きな課題であるものの財源確保に大きな課題があることから、本来であれば国の責任として実施すべき事業であると考えますが、小松市の取り組みは市長の強い思いから実現できたものであり、大変参考となりました。

 

※1 再議とは

 首長は可決した議案に意義があれば、10日以内に審議をやり直す「再議」を求めることができる。再議後、同じ議案を可決する場合は出席議員の3分の2以上の賛成が必要となり、再議前の過半数よりもハードルが高くなる。再議にかけられた修正予算案が否決された場合、原案が再提出され、可決には議会の過半数の賛成が必要となる。

 

 小松市は小松製作所の発祥の地であり、駅裏の「こまつの杜」にある世界最大級のダンプトラックや超大型油圧ショベルは迫力がりました。

 

 公民連携デスクについての報告は後日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

令和4年度 会派視察報告 氷見市 NO1 7/12

 3年ぶりの会派視察。初日は富山県氷見市に伺い、庁舎整備事業とエリアマネジメント事業について伺ってきました。

1 庁舎整備事業について

 氷見市の旧庁舎は、本館築44年、別館築53年で老朽化が進み耐震性も極めて低く、津波浸水想定区域内にあったこと、また、市民サービス窓口の分散化、敷地が極めて狭く駐車場の是対数が不足、庁舎のバリアフリー化に対応していないことなどの課題があったところに、東日本大震災を契機に庁舎整備議論が加速し、旧庁舎の土地での整備案、旧氷見市民病院への移転案、旧県立高校への移転案を比較検討した結果、市民の利便性、防災拠点機能、初期投資の観点から旧県立高校への移転案がベストと判断したもので、時系列的には平成23年10月に市庁舎の耐震診断を開始、翌年の6月に市議会において市庁舎整備検討特別委員会を設置、同年10月には市役所を移転する「市役所設置条例」と移転整備のための補正予算を可決、12月には基本・実施設計に係るプロポーザルを実施、平成25年6月に「新市庁舎デザインワークショップ」を開催(10月までに4回実施)、9月に事業費予算を可決し整備事業を着工、平成26年4月に工事完了し5月のGW期間中に引っ越し作業を行い開庁という運びで、とにかくスピーティーというのが印象でした。

 事業費は、工事請負費約15億3,300万円、県からの用地取得費約2億9千万円など合計19億2千万円で新築に比べ工事費を約6割軽減できたということであり、財源としては、交付税として70%措置される緊急防災・減債事業債が16億1,400万円のほか国・県の補助金約4千3百万円があり、一般財源は2億6千2百万円。

 旧高校校舎を活用しての移転効果としては、事業費を軽減できたことはもちろん、防災上や窓口の分散化といった課題の解消しただけでなく、主に旧高校の体育館を活用したことにより事務室がオープンスペース(壁がない)となったことから職員同士(部・課)の壁もなくなり、情報の共有や仕事のしやすさという効果も表れているということでありました。

 室蘭市でも庁舎問題は喫緊の課題であります。窓口部門が広域センタービルに配置されていることから新たな市庁舎に集約できないなど氷見市とは状況は違いますが、津波などの防災上の観点、学校校舎など既存ストックを活用した事業費の抑制などに考慮した庁舎の在り方について早急に検討すべきと感じました。

 エリアマネジメント事業については、後日報告します。

 

 

 

令和4年度 総務常任委員会先進都市行政視察 5/10~13

510日から13日の日程で総務常任委員会による先進都市の行政調査を行いました。

1 調査項目~義務教育学校について

  調査市~兵庫県姫路市及び京都府亀岡市

義務教育学校については、室蘭市においては児童生徒数の減少に加えて居住地による偏在が顕著になってきたことから、新たな学校づくり検討委員会が開催されており、その中で、さらなる統合や義務教育学校の必要性等について検討がなされていています。

まず、姫路市は、人口525,365人で小学校66校、中学校32校があり、中学校ブロック単位で小中一貫教育を推進しており、施設一体型、施設隣接型、施設分離型の義務教育学校が各1校の3校があります。

小中一貫教育を進めるにあたっては、教育振興計画の中で第1期(平成2731年度)では「組織としての学校力の向上」、第2期(令和2年~6年度)では.「異業種間連携の強化」の施策として小中一貫教育を推進しており、1.小中共通の教育目標・目指す子供像の設定、2.9年間を見通した一貫した指導、3.小中教職員・保護者・地域住民による協働実践を小中一貫教育の三要素として定義しています。

亀岡市は、人口87,302人で、小学校17校、中学校7校、義務教育学校1校があります。

平成20年に川東小・高田中学校運営協議会発足、平成21年に小中一貫教育研究会を設置。両校とも老朽化が進んでいたことから、平成25年度から施設一体型小中一貫校校舎を高田中グランドに建設開始。平成26年に高田中が新校舎に移転し、平成27年には亀岡川東学園 川東小学校・高田中学校≪小中一貫校≫開校、川東小も新校舎に移転。平成29年に体育館やグランドなどすべての工事が完了したことから亀岡市立亀岡川東学園≪義務教育学校≫として開校。

義務教育学校の導入については、建設既存の学校施設の老朽化への対応(新校舎建設)もあったようですが、義務教育9年間の学校目標を設定し、9年間の系統を確保した教育課程を編成・実施する新しい種類の学校(小学校でも中学校でもない義務教育学校)を目指すということでありました。

両市の説明を聞いた中で、義務教育学校導入には前期から後期課程(小学校から中学校)へのなだらかな移行による不安軽減、多様な年齢の子供が学年を超えた交流、日学的大きな集団での学習機会の創出、小中教員の協働による手厚い指導・組織対応、9年間を一体的に見渡した教育活動などにメリットがあるということでした。一方で環境変化が乏しい、小学校6年(最高学年)としての自覚を持ちにくいなどのデメリットも挙げられていましたが、室蘭においても地域によっては導入を検討すべきと感じました。

導入には様々な解決すべき項目がありますが、一番の課題は小中の先生同士の交流であり、導入前から研修や交流を行うことが重要とのことでした。

 

2 調査項目~本庁舎整備について

  調査市~愛知県常滑市

2点目としての本庁舎整備についてですが、室蘭市庁舎は昭和29年及び昭和39年に建設され、老朽化が進み耐震化もないことから、今後の整備が喫緊の課題となっています。

常滑市は、人口58,460人。庁舎は、昭和44年に建設され耐震性を満たしておらず、敷地も津波の浸水区域であるうえ埋め立て地のため液状化の危険性があること、また、耐震補強計画中に熊本地震・鳥取県中部地震が発生し、「地震などの災害に耐えられるだけでなく、業務の継続ができる市庁舎であること」と耐震化方針の見直しを行った結果、当初7億円と見積もっていた耐震補強工事概算費用が20億円という事業費となったこともあり、平成295月に耐震改修か建て替えか等について話し合うことを目的とした「市庁舎の今後の在り方を考える市民会議」を立ち上げ、5回の会議を経て同年11月に財源や安全面、利便性を考慮した建替えが多数を占めることなどから新庁舎建設に着手し、令和41月にオープンしたものです。

庁舎建設にあたっては、人口規模、職員数(296人)等の類似団体の事例も参考に延べ床面積を約1万㎡、来庁者駐車場118台分で約3千㎡とし、建設場所は、平成27年に高台に移転新築された市民病の隣接地、財源は、緊急防災・減債事業債を活用し、工事手法は、建設コストの縮減及び工期の短縮効果に優れたECI方式(設計時から施工業者を選考し、協力して設計を行い、施工業務を契約する方式)を採用。

最終的な事業費は、71億4千9百万円(こども図書室部分除く)で、その内緊防債は35億6千3百万円。

常滑新庁舎は、防災対策として高台に移転するとともに基礎免震装置、非常用発電機、汚水を7日分以上貯留可能な汚水槽を整備するとともに、 市民の利用頻度が高い窓口をワンフロアに集約。また、単純明快な3フロアで構成し、動線の分かりやすさを重視されており、1Fには閉庁日でも利用可能なこども図書室や市民ギャラリーを配置されているなど、職員にとっては働きやすく、市民にとっては利用しやすい素晴らし庁舎でした。

本市としては、窓口部門が広域センタービルに配置されており、これを集約することができないこと、また、新庁舎も蘭西地域とした場合、現在東室蘭駅内にある蘭東支所の在り方も検討しなければならないこと、また一番の懸念である財源については、令和7年まで延長された緊防債の活用も間に合わないことなどを非常に多くの課題があります。

 ただ、現庁舎はすでに限界となっていることから早急に結論を出すことが重要となっています。既存ストックの活用を含めた検討を進めてまいります。

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常滑市庁舎 サムネイル.pdf
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